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美奈子とレイちゃんのお話。
続きからどうぞ!
続きからどうぞ!
「そーいえばあたしってスクランブル交差点って苦手なのよね」
「え?」
唐突に言ったあたしにレイちゃんはお茶を用意していた手を止めてきょとんと目を向ける。
今日は恒例の勉強会。
十番中学より少し早く授業が終わったあたしが一番乗り。
早過ぎたかな、と思いながら角を曲がるとレイちゃんがまさに火川神社の階段をのぼるところだった。
うーんこれって運命かしら!
そんなことを考えながら横に並ぶ。にこにこしてるあたしをレイちゃんはまるで気にしていない。
……こんなに反応がないとちょっとくじけそう
けっきょくお互い無言のままレイちゃんの部屋についた。
勝手知ったるなんとやらであたしは思い切りくつろぐ。
レイちゃんはレイちゃんで淡々とお茶の準備をしていた。
――っていうか勉強会よね?お茶やお菓子の準備だなんてみんなはちゃんと勉強する気あるのかしら!
……まぁでもまこちゃんのお菓子は市販のものよりよっぽどおいしいし、休憩も重要よね!
自分でだした結論にうんうんとうなずく。今日の美奈子ったらさえてる!
そして何の迷いもなく準備を進めるレイちゃんをじーっとみていたら、つい心に浮かんだことばがそのまま口から出てしまった。
「あ、いやなんとなく思い出して」
レイちゃんに見つめられてどきどきしながら続ける。
「ふーん?」
準備が終わったのか、レイちゃんはあたしの90度右の席につく。
そのとき足と足が少しぶつかってさらにドキリとする。顔、あかくなってないかしら。
「ほら、ふつうの信号と変わるタイミングが違うでしょ。どうしてもそれにあわせることができなくて」
気が付いたら横断歩道の信号のほうが点滅してるのよね。
「美奈のことだから、どうせ信号待ってる間にキョロキョロお店でもみててまわりにおいていかれてるんじゃないの」
そういってレイちゃんはカラカラ笑う。
「まっすぐ目的地だけ目指せばいいのに」
続けられたレイちゃんのことばに胸の辺りがちくりと痛む。
こっそり隣に座るレイちゃんをみた。すっと伸びた背筋はレイちゃんそのものをよくあらわしている。
きっと目的を決めたらレイちゃんは迷ったりしないんだろう。
まっすぐ背筋を伸ばして、膝近くまである髪を綺麗になびかせて。
自分でも驚くほどはっきりその後ろ姿が想像できた。
そして後ろ姿、ということはあたしは決して隣に並んではいないのだ。
じくじくと痛みに似た切なさがひろがる。
「じゃあレイちゃんと一緒にでかけたら置いてかれそうね」
自分をごまかすようにははっと笑った。
「そうかもね」
レイちゃんはあっさり肯定する。
ついに目に涙まで浮かんできた。そんなあたしの様子に気付くことなくレイちゃんは続ける。
「みんなと……美奈に会う前の私だったら、そうだったかも」
「えっ?」
「だって美奈ったら皆と出掛けたりすると目を離したらいなくなるし。まこちゃんやうさぎなんて男の人のあとについていくし。どこいくにも大変なんだから」
ふぅとため息をつきながらレイちゃんはあたしをみつめる。
「ちゃんと待っててあげるわよ。……でもあんまりキョロキョロしてたら置いていくから」
照れ隠しのように強い言葉を重ねるレイちゃんの顔はほんのり赤い。
「レイちゃん、だいすき!」
「ちょっと美奈!?」
感極まったあたしはレイちゃんに抱きつく。
そのままあたしを支えきれなかったレイちゃんと一緒に畳の上に転がった。
「レイちゃーん!お待たせー!!」
玄関のほうから騒がしい声が聞こえる。さぁ今日の勉強会も頑張っちゃうわよ!
想像の中のレイちゃんがすこし進んだところで振り返る。
手を差し出すなんてことはしないけど、腕を組んであたしを睨む。
そんな様子をみたあたしは、笑いながら迷うことなくレイちゃんのとなりに飛びつくのだ!
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交差点関係ない。
美奈子視点は書きやすいです。
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